株や投資信託の取引をするためには、まず証券会社に口座を開設する必要がありますが、その際、口座の種類を選択することが必要です。
証券口座の種類には、「源泉徴収ありの特定口座」「源泉徴収なしの特定口座」「一般口座」の3種類があります。
ところが、証券会社のホームページ上では、それぞれの口座について簡単にしか説明されておらず、口座開設の際にどの口座を選んだらいいか悩んでしまう人も多いことでしょう。
何も考えずに口座を選んでしまうと、払う必要のない税金を払ってしまったり、税金の計算を全て自分で行う必要に迫られたり、様々な問題が出てきます。
そこでこの記事では、投資初心者でも分かりやすいように、3種類ある証券口座について詳細に解説していきます。
この記事を参考に、あなたにマッチする最適な口座を見つけくださいね。
(2019年4月30日更新)
悩んだら特定口座が間違いない
証券口座は「特定口座」と「一般口座」の2種類に大別されますが、最もオーソドックスなのが特定口座の方です。
特定口座とは、証券会社側で1月1日から12月31日までの投資の損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれる口座です。
なお、年間取引報告書は確定申告を行う際に必要となりますが、個人で作成するのはとても手間ですので、できれば証券会社に作ってもらいたいものです。
特定口座は、さらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類に分けられます。
参照:ライブスター証券
源泉徴収ありの特定口座
源泉徴収ありの特定口座は、証券会社があらかじめ税金を天引きし、納付まで行ってくれる口座です。
源泉徴収ありの特定口座を選択すると、確定申告の必要がなく、納税の手間がかからないメリットがあります。
なお、源泉徴収ありの特定口座を選択すると、投資の収入と給与収入は税金計算上、完全に切り離されますので、どんなに投資で利益を上げようが、健康保険料に投資の収入が反映されることはありませんし、親の扶養から外れる恐れもありません。
注意点としては、年間の投資利益が20万円に満たない場合、納める必要のない税金まで支払ってしまうことです。
税金の計算と納税の手間から完全に解放されるのが、源泉徴収ありの特定口座の大きな特徴です。
源泉徴収なしの特定口座
源泉徴収なしの特定口座は、源泉徴収ありの特定口座と一般口座の中間に位置する口座です。
源泉徴収なしの特定口座は、年間取引報告書だけは証券会社が作成してくれ、確定申告などの手続きは自分自身で行なう必要があります。
源泉徴収なしの特定口座を選択すると、投資の利益が年間20万円以下の場合、不要な税金を支払うことなく投資を進められるメリットがあります。
仮に投資による利益が20万円を超えても、証券会社が年間取引報告書を作成してくれますので、確定申告の際にかなり手間が省けます。
源泉徴収なしの特定口座は、年間の投資利益が20万円以下の人に適した口座です。
国債や社債に投資するなら一般口座を
一般口座とは、税金が天引きされることがなく、証券会社側で年間取引報告書も作成してくれない口座です。
一般口座を開設すれば、投資の利益が20万円以下なら問題ありませんが、投資の利益が20万円を超えたり、損益通算や損失の繰越控除を利用するとなると確定申告が必要となり、自身で年間取引報告書を作成する手間がかかります。
一般口座を選択するよりも、年間取引報告書が作成される特定口座の方がメリットが大きいといえます。
一般口座を利用するメリットがないように思えますが、国債や社債の取引は一般口座でしか対応していないため、そういった取引向けに一般口座が存在しているのです。
源泉徴収ありの特定口座のメリット・デメリット
メリット① 確定申告の手間がかからない
源泉徴収ありの特定口座の一番のメリットは、確定申告の手間が一切かからないことです。
源泉徴収ありの特定口座では、投資の利益が振り込まれる際、あらかじめ税金が天引きされて振り込まれます。そのため、自分で確定申告を行なって、わざわざ税金を納める手間がかかりません。
源泉徴収ありの特定口座を利用することで、税金の計算や納付の手間を一切かけることなく、投資に専念することができます。
メリット② 確定申告なしで損益通算ができる
源泉徴収ありの特定口座を選択し、証券会社と上場株式配当等受領委任契約を結ぶことで、口座内での配当金や分配金などの利益と、売却損を損益通算(※)できます。
(※)損益通算とは、投資の利益と損失を相殺しあって、税金を節約することをいいます。例えば、配当金が5万円、売却損が3万円あるケースでは、損益通算をすることで、2万円(=5万円−3万円)の利益に対して税金がかかるようになります。
本来、損益通算するためには確定申告の必要がありますが、上場株式配当等受領委任契約を結ぶことで、特定口座内で発生した利益と損失が自動的に損益通算されます。
なお、源泉徴収ありの特定口座を開設するだけで、上場株式配当等受領委任契約を結べる証券会社もありますので、それぞれの証券会社の口座開設要件をよく確認しましょう。
メリット③ 扶養から外れない
源泉徴収ありの特定口座なら、扶養に入っている主婦や学生が投資でいくら稼ごうが、夫や親の扶養から外れることはありません。
例えば、学生が投資で1億円稼いだとしても、源泉徴収ありの特定口座なら親の扶養から外れることはないのです。
源泉徴収ありの特定口座を選択していると、投資でいくら稼ごうがその収入は他の収入に反映されることはありませんし、20%の税金以外には何も課税されませんので、稼げば稼ぐほどその恩恵は大きくなります。
デメリット:20万円以下だと税金の払い過ぎ
源泉徴収ありの特定口座には多くのメリットがありますが、年間の投資利益が20万円以下の場合には、逆に損します。
そもそも、年収2,000万円以下のサラリーマンで、投資による利益が年間20万円以下の人は、税金を支払う必要がなく確定申告も不要です。
年間利益が20万円以下の時に源泉徴収ありの特定口座を選択してしまうと、本来は支払う必要のない税金が自動的に天引きされてしまうため、源泉徴収なしの特定口座を選んだ方がお得ということになります。
なお、一旦税金が天引きされてしまうと、払い戻しは受けられません。
源泉徴収ありの特定口座を選択するにあたっては、年間の投資利益が20万円を超えることが重要なポイントとなります。
源泉徴収なしの特定口座のメリットとデメリット
メリット① 年間取引報告書を作成してくれる
源泉徴収なしの特定口座は、一般口座と同様に証券会社が税金を天引きすることはありませんが、年間取引報告書を作成してくれるメリットがあります。
そのため、仮に投資の利益が20万円を超えて確定申告の必要が出ても、自身で年間取引報告書を作成する手間がかかりません。
特にデイトレードやスキャルピングなどの短期売買を行っている投資家にとって、年間取引報告書の作成の手間がかからないのは、非常に嬉しいことでしょう。
メリット② 投資の利益が20万円以下なら納税不要
年収2,000万円以下のサラリーマンで、投資による利益が年間20万円以下の場合、投資の利益に対する税金は支払う必要がありません。
年間利益が20万円以下のケースでは、源泉徴収なしの特定口座を利用することで、余計な税金を支払わなくていいメリットがあります。
デメリット① 利益が20万円を超えると確定申告が必要
源泉徴収なしの特定口座は、年間利益が20万円を超えると、確定申告の手間がかかるデメリットがあります。
ただ、年間取引報告書だけは証券会社が作成してくれますので、確定申告にそれほど手間はかかりません。
源泉徴収なしの特定口座を利用するなら、年間の利益を20万円以下に抑えたいところです。
一般口座のメリットとデメリット
メリット:一般口座でしか取引できない商品がある
一般口座を開設するメリットは、一般口座でしか取り扱いのない商品が取引できることです。
国債や社債などの一部商品は、一般口座でしか取引できないようになっていますので、もしもそういった商品に投資する予定があるのなら、一般口座を開設しておいてもいいかもしれません。
デメリット:年間取引報告書を自分で作成する必要がある
一般口座を選択すると、確定申告の際に年間取引報告書を自分で作成する必要があります。
年間の取引回数が少ないのならいいですが、デイトレードやスキャルピングをしていると、購入株数や株価、手数料、売却金額などを全て記録しないといけませんので、かなり手間がかかります。
特定口座が対応している商品に投資するなら、一般口座をわざわざ選択するメリットはほとんどなく、特定口座を選択するのが賢明といえます。
結局どの口座を選択すればいいの?
ここまで「源泉徴収ありの特定口座」「源泉徴収なしの特定口座」「一般口座」の3種類について解説してしてきました。
それでは、一体どの口座を開設すればいいのでしょうか?
以下、どの口座に投資するのが最も有効か解説していきます。
参照:みずほ証券
開設するなら特定口座
まず大切なのが、特定口座と一般口座、どちらを選択するかということです。
一般口座のほぼ唯一のメリットは、年間の利益が20万円以下なら税金を支払う必要がないことですが、これは源泉徴収なしの特定口座でも同様のことがいえます。
さらに、源泉徴収なしの特定口座なら、年間取引報告書を作成する手間も省けます。
つまり、一般口座を選択するメリットはほぼなく、証券口座を開設するなら、特定口座を選択するのが間違いないでしょう。
年間利益が20万円を超えるなら源泉徴収ありを選択
それでは、特定口座のうち源泉徴収ありと源泉徴収なし、どちらを選択すればいいのでしょうか?
結論から言うと、年間利益が20万円を超えるのなら『源泉徴収ありの特定口座』を、年間利益が20万円以下に収まるのなら『源泉徴収なしの特定口座』を選択するといいでしょう。
特定口座と一般口座のまとめ
今回は、3種類ある証券口座の違いについて開設してきました。
口座の選択を誤ると、思わぬ損をしたり余計な手間がかかってしまいますので、それぞれの口座の違いをしっかりと理解し、口座を開設してみてくださいね。
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