女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する「スマートデイズ」の破産手続きを皮切りに、スルガ銀行は経営破綻の危機に直面しています。
単に融資が焦げ付くという問題だけでなく、最近ではスルガ銀行側で不正融資が横行していたことまでもが明らかになってきました。
もはやその存続すら危ぶまれる状況になったスルガ銀行は、経営破綻する可能性も十分に考えられます。
この記事では、スルガ銀行の不適切融資問題について深掘りしていきます。
(2019年8月10日更新)
スルガ銀行の不正融資問題の概要
まずはスルガ銀行の不正融資問題の概要について、内容を振り返ってみましょう。
きっかけはスマートデイズの破産
今回の問題のきっかけとなったのは、女性専用シェアハウスかぼちゃの馬車を運営するスマートデイズの破産手続き開始からです。
報道によると、以下のようになります。
シェアハウスは運営会社のスマートデイズ(東京・中央)が一括して借り上げ、女子学生らに転貸。約束した賃料を所有者に支払う仕組みだった。スマート社から所有者への賃料の支払いは1月に停止。同社は4月に経営破綻し、破産手続きに入った。所有者は想定した家賃収入が得られなくなり、スルガ銀行への毎月のローン返済に窮する例が続出した。
(引用:日本経済新聞)
つまり、シェアハウスの運営会社であるスマートデイズからの賃料支払いが停止したため、シェアハウスのオーナーがスルガ銀行に対してローンを返済できなくなり、結果的にスルガ銀行の融資が焦げ付く恐れが出てきたのです。
融資規模は1,200億円
シェアハウスでは、土地の取得費用や建設資金を1件あたり平均で1億円前後を会社員らに融資した。シェアハウス融資は総額で1200億円規模とされる。土地・建物など担保の価値は400億円規模とみられる。残る800億円程度の処理が焦点となり、計上する損失は数百億円規模にのぼる可能性がある。
(引用:日本経済新聞)
報道によると、スルガ銀行のシェアハウス関連の融資額は1,200億円程度といわれています。一方、担保となる土地や建物の価値は400億円程度しかないとみられています。
つまり、万が一融資が焦げ付くことになると、スルガ銀行は800億円もの融資が回収不能になる計算です。
この不足分を補填するため、スルガ銀行は数百億円規模の損失を計上する必要があります。
問題はさらに深い問題に
さて、スマートデイズの破産に端を発した問題は、単にスルガ銀行が損失を計上するだけでは終わりませんでした。
外部機関による調査が進むにつれ、スルガ銀行側で書類の改ざんなどの不正融資の可能性があることが明らかになってきたのです。
もはや損失を計上するというレベルで終わる話ではなく、金融機関のコンプライアンス問題まで発展しつつあるのです。
根深い不正融資問題
ずさんな審査体制
スルガ銀行では、長きにわたってずさんな審査体制が敷かれていました。
報道によると、大多数の行員が不正融資について認識していたことが分かります。
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京都)が経営破綻した問題で、大半の融資を実行したとされるスルガ銀行(静岡県)は15日、審査書類の改竄や二重売買契約などの不正を相当数の行員が認識していた可能性があるという調査結果を発表した。
(以下中略)
この日は2018年3月期の決算発表に合わせ、経営陣がシェアハウス関連融資に関する調査結果を公表。かぼちゃの馬車などの融資について営業部門約500人を対象に内部調査を実施した結果、オーナーの年収や預貯金に関する資料の改竄、金額の異なる2種類の売買契約書を作って銀行融資額をかさ上げする二重売買契約について「相当数の行員が認識していた可能性がある」と報告した。
参照:楽待新聞
「山ほど問題があった」。第三者委の中村直人委員長は同日の記者会見でこう述べた。調査報告書には、実際に不適切な融資に手を染めた営業現場、それを黙認して99%の案件を承認していた審査部門、そして不適切な行為を見過ごしてきた取締役会について問題点を列挙している。中村氏は一連の不適切な行為を「組織的」と認定した。
参照:日本経済新聞
スルガ銀行では、融資を通すため営業部門が積極的に資料の改ざんや二重契約書の作成に関与していたことがわかっています。
また、審査部門も99%の融資を承認していたため、もはや審査機能は全く機能していなかったといわざるを得ません。
ノルマ至上主義の風土
スルガ銀行では、どうしてここまでずさんな融資が行われたのでしょうか?
その根幹には、ノルマ至上主義という風土があるようです。
この日の会見では、部門間の歪んだ力関係を背景に無理な融資が実行された可能性も浮上。危機管理委員会の調査結果で「営業部門の幹部が融資実行に難色を示す審査部担当者を恫喝し、審査部門が抗し難い状況が生じていた」とする内容の指摘があったことが公表された。
米山社長は「今期も増収増益をしないといけないというプレッシャーの中で、営業部門に力が入りすぎてしまい、審査部より営業部門の方が強い体制が出来上がってしまった」と分析。審査部が担保評価や属性などを踏まえて否決した案件について、支店長らが「何とかならないか」などと申し入れるケースがあったことを明かした。
参照:楽待新聞
第三者委は個々の行員に対して調査を実施。ノルマについては「毎月、月末近くになってノルマができていないと机を蹴ったり、テーブルをたたいたり、1時間、2時間と永遠に続く」「7%超の無担保ローンを月に10億円実行しろとの目標は過大であると思いませんか」などの声があった。
営業成績が伸びないことについて上司の叱責があったかどうかという質問については「数字ができないならビルから飛び降りろといわれた」「お前の家族皆殺しにしてやるといわれた」などとの回答があった。
こうした結果、ルール違反の融資をした行員も多数出た。具体的な回答では「自分もしくは家族名義でのローン実行」「稟議(りんぎ)上で架空の人物を登場させる」という行員が続出した。
参照:日本経済新聞
「ノルマを達成させるためにはどんな手段も問わない」という風土が、今回の不正融資につながったのでしょう。
シェアハウス以外にも不正融資が横行
スルガ銀行では、今回問題となったシェアハウスの融資だけでなく、不動産全般の融資で不正があったことが明らかになっています。
まさに金融機関の姿勢そのものを問われる状況にあります。
顧客が不動産業者に託した融資関連書類が改竄(かいざん)され、融資条件に合うように見せかけられていたなど不適切な融資が横行していたことが既に判明している。こうした不正な融資はシェアハウスだけでなく、「一棟売り」など個人の投資用アパートでも実施されていたもようだ。
具体的には、個人が購入した物件について不動産価値を高く見せかけ、より高い賃料がとれるように装うなどの方法をとっていたとされる。
スルガ銀行の投資用不動産融資は、アパートなども含めると全体で2兆円に上る。今回、新たに判明した不正で「不適切融資」は2000億円から大幅に拡大するとみられる。スルガ銀は2018年3月期決算で、155億円の貸倒引当金を追加計上しているが、さらに積み増す可能性も出てきている。
参照:SankeiBiz
不正融資問題に対する対応
金融庁の対応
スルガ銀行の不正融資問題を受け、金融庁はスルガ銀行への立入検査を実施。
立入検査によりスルガ銀行の不正融資の全貌が明らかになると共に、創業家による不透明な融資も明るみに出つつあります。
今後、業務停止命令が出される可能性も十分に考えられます。
スルガ銀の子会社とは別に、岡野家の関連企業(ファミリー企業)は20社以上あり、スルガ銀はこのうち約10社と融資取引がある。融資残高は2018年3月末時点で500億円弱にのぼるという。スルガ銀の融資残高(約3.2兆円)の1.5%にあたる。
関係者によると、02年3月時点で創業家関連企業への融資残高は1200億円を超えた。金融庁が過去の検査で、取引の適正化を指示したこともあり残高を徐々に減らしてきた。
(以下中略)
金融庁は銀行法などに基づいた「アームズ・レングス・ルール」と呼ばれる規定で、銀行が子会社などに融資する場合、同じ信用力を持つと評価される他の一般企業より有利な条件にすることを禁じている。
(以下中略)
仮に創業家の関連企業が子会社だとすると、500億円にのぼる融資を実行した判断や貸し出し条件が適正だったかどうかが問題になる。融資した金額のリスク評価が適切だったかも論点になる。
(以下中略)
さらに別の問題も浮上してきた。子会社による親会社の株式の保有を禁じている会社法に触れかねない点だ。子会社と認定されれば、創業家の関連企業はスルガ銀株を手放す必要がある。創業家は関連企業を通じてかなりの割合のスルガ銀株を持つとの見方もあり、スルガ銀の企業統治に大きな影響を与えそうだ。
参照:日本経済新聞
経営陣の退陣
報道によりますと、今回の一連の不正融資問題の責任を取り、全経営陣が退陣する見通しとなっています。
スマートデイズの破産から始まった一連の不正融資問題は、ついに経営陣の辞任にまで発展したのです。
問題の責任を取り、米山明広社長(52)と白井稔彦専務(64)は辞任する見通しだ。創業家出身の岡野光喜会長兼CEO(最高経営責任者、73)もすでに辞任の見通しとなっている。代表権を持つ役員3人がすべて辞任する異例の事態だ。辞任時期は第三者委の報告やその後の金融庁の処分を受けて検討される方向だ。
参照:朝日新聞
スルガ銀行の経営破綻の可能性は?
窮地に立たされているスルガ銀行は、今後どのような展開を辿るのでしょうか?
他行による買収が行われる?
一連の不正融資問題を受け、スルガ銀行の株価は急落。スルガ銀行の時価総額は大幅に割り込んでおり、他行による買収の可能性もないとも言い切れない状況になっています。
このため、市場では「スルガ銀の引き受け先がどこになるかに関心が移っている」(証券会社)。名前が挙がるのは3メガバンクや、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループなど。国内外のファンドやスルガ銀と同じ静岡県を地盤とする有力地銀の静岡銀行、顧客基盤の拡大が課題のあおぞら銀行などの名前もささやかれる。
参照:産経ニュース
最悪のケースである経営破綻よりかは、買収の方がまだいいと考えれます。
経営破綻する最悪のケース
スルガ銀行がこのまま経営破綻する可能性も十分に考えられます。
金融庁は不正の舞台となった個人融資の新規受け付けを停止するなど一部業務停止命令の処分を検討。スルガ銀にとっては個人向け融資に次ぐ、「第2の柱」をいかに作れるかが再建の鍵を握る。顧客に富裕層を多く抱えるなどの強みもあるが、顧客離れが深刻化すればダメージは必至だ。
参照:SankeiBiz
報道にある通り業務停止命令が出されれば、スルガ銀行の経営に大きなダメージを与えることは間違いありません。今後のスルガ銀行の動向からは目が離せません。
スルガ銀行の経営破綻の可能性のまとめ
スルガ銀行といえば、不動産投資をしている人で知らない人はいないぐらい有名な銀行です。他の銀行では融資がおりない物件でも、スルガ銀行なら融資がおりることが多々あるのです。
ただ、組織ぐるみで不正が横行していたからこそ、スルガ銀行は最後の駆け込み寺として有名になったのかもしれません。
今回の不正融資問題を受け、各金融機関は不動産に対する融資を大幅に引き締めています。
これから不動産投資を始めようとしている人にとっては、まさに苦しい戦いが始まったといえます。反対に、すでにある程度の実績がある投資家にとっては、買い手が減り不動産の価格が下落するため、チャンスの到来と考えられます。
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