不動産投資で最も頭を悩ます「空室問題」に対処する方法として、「サブリース」があります。
サブリースは、要するに一括借り上げ制度のようなもので、オーナーとしては非常にありがたい制度です。
ところが、そんなサブリースですが、思わぬ落とし穴があり、特にサブリースの解約トラブルが頻繁に報告されています。
この記事では、サブリースの基本から始まり、注意点などを解説していきます。
(この記事は、過去に書かれた記事を2018年9月16日に加筆修正したものです。)
サブリースの基礎知識を確認しよう
サブリースとは
サブリースは、またの名を「一括借上げ」というように、不動産をまるまる全てサブリース会社が借り上げてくれる制度です。
サブリース会社は、借り上げた部屋を一つ一つ募集に出し、入居付けを行い、家賃を徴収します。
そして、その家賃からマージンを差し引いたものを保証料としてオーナーに毎月支払います。
空室対策になる
サブリースを利用することで、空室の有無に関わらず毎月一定額がサブリース会社から支払われるかため、オーナーは空室リスクを心配する必要がなくなります。
不動産投資で大きなウェイト占める入居付けから手を引けるのは、精神的にも労力的にもかなり助かることでしょう。
また、サブリース会社としても、家賃収入とオーナーへの保証料の差額が利益として受け取れます。
新築時からの保証が大半
サブリース契約の多くが、新築時から10年~30年にわたって長期的に借り上げ保証するものが多いです。
逆にいうと、築年数が経過した中古物件でサブリースを受託してもらえるケースは稀です。
また、1棟ではなく1部屋単位でのサブリースとなると、さらに敬遠されることが多いようです。
設定賃料は80〜90%
サブリースで保証される家賃は、通常は元々の家賃の80%~90%ほどの水準です。残りについては、サブリース会社の手数料として差し引かれます。
ただ、サブリース会社側は確実に入居者が入る家賃設定にしておきたいため、設定家賃は相場よりも低めに設定されることが多いです。
また、通常は、サブリース契約をしても保証料がもらえるわけではなく、最初の2~3ヶ月間は家賃が入ってこない「フリーレント期間」が設定されます。
サブリース契約のメリット
空室や滞納の心配をしなくていい
サブリースを利用することで、オーナーは空室や滞納の不安から完全に解放されます。
サブリース中の物件に空室が発生しても、また入居者が家賃を滞納しても、その費用は全てサブリース会社が引き受けてくれます。
オーナーがやることといったら、毎月保証料が入ってくるのを待っているだけでいいのです。
入居トラブルとも無縁
サブリース中に入居トラブルが発生しても、事の当事者はサブリース会社と入居者ですので、オーナーは入居トラブルとは無縁ということになります。
また、家賃の滞納や退去に匹敵するトラブルが起きると、オーナー側で訴訟を起こしてでも対応せざるを得ないこともありますが、サブリースをしていると、入居者はオーナーとではなくサブリース会社と賃貸借契約を結んでいるため、オーナーが訴訟の当事者となることもありません。
確定申告が簡素化できる
サブリース契約上、オーナーはサブリース会社と賃貸借契約を結んでいるにすぎませんので、確定申告の際の収支計算が簡素化できるメリットがあります。
そのため、確定申告がしやすくなり、税務上の手間を大きく省けます。
サブリースで知っておきたい注意点
サブリース契約ですが、実はトラブルが非常に多いです。
契約内容をしっかりと確認していないと、あとあとトラブルになりますので、契約締結前にしっかりと確認しましょう。
手数料が取られる
サブリースはたしかに便利ですが、サブリース会社から手数料が引かれていることはしっかりと認識しておきましょう。
サブリース会社は、家賃収入から手数料を差し引いた金額を保証料としてオーナーへ支払っているのです。
ただ、手数料が取られるのは、サブリースをする上では仕方のないことです。
自分で賃貸経営をして空室リスクを負うか、それとも空室リスクを抑えて手数料を支払うか、どちらを取るかです。
免責期間がある
サブリース契約の内容次第では、新築時や退去時にサブリースの免責期間が設けられていることがあります。
免責期間とは、家賃保証がされない期間のことをいい、オーナーにとっては保証料がもらえない期間ということになります。
特に退去後の一定期間を免責期間と定める契約内容だと、空室時の家賃保証というサブリースの魅力が台無しですから、これは完全に不利な契約といえます。
免責期間はないことがベストですし、仮にあったとしても長くて2ヶ月ほどに抑えたいところです。
保証料の見直しがある
サブリースは、実は永久に保証料が変わらないわけではなく、2年毎の契約更新のタイミングで、見直しが行われます。そして、当の保証料は、物件の築年数が経過するにつれて徐々に下がっていきます。
仮にオーナーが保証料の値下げに反対すると、サブリース契約の更新を拒否されることがあります。
「20年間家賃保証」などという宣伝文句がありますが、たしかに家賃保証そのものは20年間行ってくれますが、その「保証料」については、全く保証されていないのです。
サブリース契約を結ぶなら、保証料が下がる前提で収支計算をしましょう。
原状回復費用や修繕費用がかかる
退去後の原状回復費用や大規模修繕費用は、契約内容によってはオーナーが負担するケースがあります。
この時に問題となるのが、サブリース会社が指定する通りに工事をしないと、契約の更新が断られるケースがあることです。
具体的には、工事費用が相場よりも高い業者を指定してきたり、不当に高額な工事費が請求されることもあります。
サブリース契約を締結する際には、費用負担や業者の指定などの文言をしっかりと確認しましょう。
契約が途中で解約されることもある
長期間の家賃保証を謳っているサブリース会社が多くありますが、これはあくまで借り上げ家賃の値下げ要求が通ったり、経済情勢が著しく変化しなかった場合の話で、サブリース契約そのものは、業者側から有利に解約できるようになっています。
私たち投資家としては、どういった時にサブリース会社側から解約できるのか、契約内容を読み込むことが大切です。
サブリース会社が破綻する可能性もある
これは最近何かと話題なニュースですが、サブリース会社が破綻することだってあります。
万が一サブリース会社が破綻すると、保証料が支払われなくなったり、敷金がオーナーへ引き継がれないこともあります。
そのため、サブリース会社の経営状況を確認することは必須です。
また、サブリース会社が建設会社やデベロッパーの子会社である場合、親会社が潰れると、連鎖倒産する可能性もありますので、注意しましょう。
入居者の情報が引き継がれないことも
サブリース契約が終了すると、通常は入居者の情報や賃貸契約書がサブリース会社からオーナー側へ引き継がれます。
ところが、中にはその引き継ぎがスムーズに行われないことがあります。
そうなると、入居者への家賃振込先の変更連絡や契約条件の引き継ぎがきちんと行われず、入居者と揉めるケースがあります。
また、物件のメンテナンスがいい加減に行われていると、その後の修繕に莫大な費用がかかる恐れもあります。
サブリースのまとめ
サブリース契約は上手く使えばかなり有効に機能しますが、契約内容の確認を怠ると、あとで大変面倒なことになります。
面倒ではありますが、契約書面にはしっかりと目を通し、不明な点があったら業者にしっかりと確認するようにしましょう。