東証一部に上場するアパートの開発・管理を行うTATERUが、顧客の融資を通すため顧客資料の一部を改ざんしたことが明らかになりました。
顧客資料の改ざんというコンプライアンス違反を犯したTATERUは、倒産の危機も噂される状況に直面しています。
スルガ銀行による不正融資問題もある中、投資用不動産に関わる企業に対する疑心暗鬼の目が広がりつつあります。
(最終更新日:2019年8月10日)
TATERUの資料改ざん問題の概要
「ハイテク銘柄」として有名な企業
TATERUは、投資用不動産の販売会社といいつつも、インターネットなどの最新技術を駆使した「ハイテク企業」として有名です。
例えば、アパート選びや購入後の収支管理などをまとめて行えるスマートフォンアプリを提供したり、取り扱う物件にAIスピーカーを設置したり、旧態依然の不動産業界にあって先進的な取り組みを次々と行ってきました。
機関投資家からも異色の「ハイテク企業」として人気を博していました。
口座データの改ざんが行われていた
ところが、今回TATERUが顧客の口座データの改ざんを行っていたことが明らかになりました。
そもそもの発端は、50代の会社員による告発でした。
借り入れ希望者は都内在住の50代の会社員。代理人のわたなべ法律会計事務所(東京・千代田)の加藤博太郎弁護士によると、会社員は今年4月にTATERUから名古屋市内で木造3階建て、全9戸のアパート物件を紹介された。土地・建物で約1億1000万円の購入資金は山口県の西京銀行の融資を利用し、自己資金がなくてもアパートを経営できるとの提案を受けた。
その際、西京銀への融資申請で必要な預金残高を示すインターネットバンキングの履歴データをTATERUの担当者に渡した。預金残高は約23万円だったが、TATERUの担当者は「それで問題ない」と返答したという。その後、この担当者から融資の承認がおりたとの連絡があった。
会社員は6月、西京銀に直接、TATERUの担当者が提出した自分の預金残高を示すデータの開示を要求。確認すると約23万円の残高は約623万円に水増しされていたという。TATERUは同社の担当者による改ざんを認め、会社員に謝罪。手付金として受け取っていた50万円の2倍の100万円を支払うと伝えてきたという。
参照:日本経済新聞
報道から分かる通り、預金残高が不正に水増しされ、金融機関に提出されていたことが明らかになっています。
なお、顧客資料の改ざんが行われたのは今回が初めてのことではなく、以前から行われていたことが分かっています。
今回のように顧客の預金残高を書き換える手口や、一時的に資金を貸し付けて預金を多く見せかける「見せ金」も行われていたようです。
コンプライアンス重視の風潮の中、時代に逆行する行いを働いたTATERUは、相応の罰を受けたといえます。
TATERUは特別調査委員会を設置
改ざん問題を受け、TATERUは9月頭、改ざんが他にも行われたいなかったかを調べるため、外部の弁護士らによる特別調査委員会を設置しました。
調査委員会による調査期間は3ヶ月程度と見られていますが、それ以上になる可能性もあります。
特別調査委員会により、組織的に資料改ざんが行われていたのかどうか、明らかになることが期待されます。
TATERUの不正の株式市場への影響
株価は7割暴落
8月末に発覚した改ざんの報道を受け、TATERUの株価は暴落。翌9月頭には年初来安値をつけました。
連続でストップ安となり、8月末から9月頭までの下落率は実に7割にも達します。
また、連想売りとして、投資用不動産を手がける銘柄にも売りが出ました。関連銘柄であるシノケングループの株も、8月末から9月初めにかけて3割ほど下落しています。
参照:会社四季報ONLINE
TATERUの再発防止策の内容
独立部署を設置
TATERUは9月14日、改ざんに対する再発防止策を発表しました。
具体的な内容としては、営業社員を通さずに金融機関に融資資料を提出できるよう、独立部署を設置するというものです。
独立部署で顧客の預金通帳を直接確認し、さらには内部監査室が抜き打ちで手続き状況を確認するというものです。
従来は営業社員が顧客から預金残高データを直接受け取っていましたが、それを改め、さらには監査室による抜き打ちチェックも行うことで、改ざんを防ぐ狙いがあります。
TATERUの今後の方向性について
再発防止策の発表を受け、TATERUの改ざん問題は一応は終息に向かっていると考えられます。
そのため、TATERUが倒産するかというと、そんなことはないと思われます。
しかし、特別調査委員会による調査は引き続き行われており、結果次第では、TATERUはさらなる苦境に立たされる恐れがあります。
今後の動向からは目が離せません。
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